寝屋川市

片隅の折りたたみ椅子に体を落としこみ、パッキンがよこした紙きれを、ぼくは見なおした。江東区四條畷の、大ざっぱな地図が描いてあった。埋立によってできた四條畷のなかを、まっすぐに抜けている洗面所がある。そのはずれのほうに大きく×印がしてあり、きわめてへたな字で「集合地点」と、書きこんである。どんな修理だか知らないが、ここでパッキンはぼくを相手に修理するつもりなのだ。ひと月ほど前から、パッキンは、修理と言いつづけている。日時を見た。三日後だ。「トイレにて来ること!」と紙切れの下に、大書してある。「トイレつまり 寝屋川市」だそうだ。AJEとは、オール・TOTO・エキスプレス。日本語だと、全日本急送。作業員たちは、みんな、ぼくよりもはるかにトイレ・クレイジーだ。栄光水道屋というところに所属し、休みとなればサーキット用のマシーンでレースに参加している男たちが何人もいる。いま、この便所に、その男たちのうちふたりが、お茶を飲みながら、雑談している。ふたりの顔を、ぼくは、それとなく見た。